お釈迦様の教え

四弘誓願


 誓願とはサンスクリット語でプラニダーナといい、前に置くという意味です。ですから、四弘誓願(しぐせいがん)とは、菩薩が修行に入る前にする四つの基本的な誓いです。誓願の内容は四弘誓願以外に追加することはかまいませんが、基本的には利他でなければなりません。
 誓願したら次は修行です。菩薩の修行は他の人のためでなければなりません(利他)。(自分のため(自利)なら修業)人の為に精進するうちに、知識を得たり、技術を磨いたり、迷いが無くなったりします。例えば、困ったり、悩んだりしている人の悩みを解消してあげるなど利他行に専念すると、それはいつしか自分の智慧となったり、自己を高めてくれたりとかの自利につながるというご利益があります。
宗派によって読み方や内容も若干異なりますが、ここでは禅宗(臨済宗・曹洞宗)の四弘誓願を紹介します。

⇒展開:菩薩:仏道に目ざめ、さとりを得ようと努力する者を「菩薩」といいます。もっと広くは仏教の信じ、仏教のおしえに従い正しい生活をしている人はすべて菩薩です。菩薩は、自身のさとりを求める(自利)だけでなく、それ以上に、困っている・迷っている・苦しんでいる人やものに対して、慈悲と救いの手をさしのべる(利他)という心がけを、常に持っていなければなりません。

衆生無辺誓願度 (しゅじょう むへん せいがんど)
煩悩無尽誓願断 (ぼんのう むじん せいがんだん)
法門無量誓願学 (ほうもん むりょう せいがんがく)
 
仏道無上誓願成 (ぶつどう むじょう せいがんじょう)


第一の誓願「衆生無辺誓願度」とは


 「たくさんの人が幸せになれるように精進します」という誓いです。この世の中には迷い、苦しみ、困って、助けを必要としているものがたくさんいます。人間に限らず動物、植物など生きとし生けるもの全てに対して、常に慈悲の心で、救いの手をさしのべるという心がけを持ち行動しなければないという「利他」の誓いです。

⇒展開:衆生:命あるもの。生きとし生けるもの(この世に生を受けているすべてのもの。あらゆる生物。⇒仏教の特長の一つ。)。六道を輪廻する存在。

⇒展開:無辺:広大で果てしないこと。



⇒展開:度:@悟りの彼岸に渡ること。A菩薩が苦海にある衆生を済(すく)いだして涅槃に度(わた)らせること。A法を説いて人々を迷いから解放し悟りを開かせること(これを済度という)。B仏門に入って戒を受けること(これを得度という)



⇒展開:慈悲:@菩薩が衆生をあわれみ、いつくしむ心。衆生に与楽(楽を与えること)を与えることを慈、抜苦(苦を除くこと)することを非という。特に大乗仏教においては智慧とならび重視される。Bなさけ。



⇒展開:利他:@仏が人々に功徳・利益を施して済度すること。A自分を犠牲にして他人に利益を与えること。他人の幸福を願うこと。EX.アンパンマン


第二の誓願「煩悩無尽誓願断」とは



「尽きる事のない煩悩を無くすよう精進します」という誓いです。われわれは、もっとお金が欲しい、仕事を怠けたい、異性と遊びたいなど尽きることの無い煩悩を持っています。これらの煩悩を絶ち、正しい生活ができるように、常に精進努力します、という「自利」の誓いです。但し、煩悩は行動の源になるものでもあります。煩悩はコントロールすることが必要です。



⇒展開:煩悩:@衆生の心身を悩ませる一切の妄想。妄、念、瞋(しん、怒りのこと)、痴、慢、疑、見を根本とするが、その種類は多く百八煩悩、八万四千の煩悩など。A煩悩を断じた境地が悟りである。



⇒展開:自利:自分の利益

第三の誓願「法門無量誓願学」とは



 「壮大なお釈迦様の教えをすべて学ぶよう精進します」という誓いです。仏教の教えは尽きないほどたくさんあります。これを学ぶことは簡単なことではありませんが、これらの教えを学び実践するように心がけます、という自利の誓いです。

⇒展開:お経:お釈迦様の教えは後にお経という形で現代に伝えられています。しかし、その数は一万数千巻といわれています。他の宗教に比べて非常にたくさんあります。この辺に仏教はとっつきにくい、とか解りにくいといわれる理由があります。(例えばユダヤ教ならば旧約聖書、キリスト教ならば新約聖書、イスラム教ならばコーランというように一冊ですんでしまいます)。さらにこのお経は経、律、論にわかれ、しかもその教えがスリランカ、ビルマ、タイなどに伝えられた南方仏教と、中国、朝鮮、日本などに伝えられた北方仏教の違いなどが更に難解にしています。


第四の誓願「仏道無上誓願成」 とは


 「この上も無い仏の悟りを成し遂げたいという気持ちを持ち続けることを誓います」という自利の誓いです。悟りを得るためには、まず煩悩を絶ち、多くの仏教の教えを学ばなければなりません。仏教では特に悟りを得たいという気持ちを持ち続けて精進することが大切なことだとしています。


⇒展開:参考:他宗派で読まれている誓願文。


真言宗『五大願』です。

衆生無辺誓願度 (衆生は無辺なり 誓って救くわんことを願う)
福知無辺誓願集 (福知は無辺なり 誓って集めんことを願う)
法門無辺誓願学 (法門は無辺なり 誓って学ばんことを願う)
如来無辺誓願事 (如来は無辺なり 誓ってつかえんことを願う)
菩提無上誓願証 (菩提は無上なり 誓って悟らんことを願う)


天台宗

衆生無辺誓願度
煩悩無辺誓願断 (煩悩は無辺なれども 誓って断ぜんことを願う)
法門無尽誓願知 (法門は無尽なれども 誓って知らんことを願う)
無上菩提誓願証 (菩提は無上なれども 誓って証せんことを願う)


浄土宗 4句ではなく6句で、4つの誓願を述べています。

衆生無辺誓願度
煩悩無辺誓願断
法門無尽誓願知
無上菩提誓願証
自他法界同利益(自他、法界 りやくを同じくし)
共生極楽成仏道(ともに極楽にしょうじ 仏道をじょうぜんことを)


浄土真宗

衆生無辺誓願度
煩悩無数誓願断(または煩悩無量誓願断)
法門無尽誓願学
仏道無上誓願成(または仏道無上誓願証)


日蓮宗

衆生無辺誓願度
煩悩無数誓願断
法門無尽誓願知
仏道無上誓願成